次世代への平和のバトン 「語り伝える東京大空襲」の五冊本です
 2011年2月1日(戦災資料センター・ニュース No.18より)  ビジュアルブック『語り伝える東京大空襲』(全5巻・新日本出版社)が、この2月末で完結します。  戦後生まれの人たちが、国民の8割にも及び、内外の平和が揺らいできた現在、当センターは戦争・空襲の惨禍をくり返すまじの決意で、本シリーズのまとめに総力をあげました。東京大空襲・戦災のあの日あの時と、その前後のいきさつまで検証すべく、[1]戦争・空襲ヘの道、[2]はじめて米軍機が頭上に、[3]10万人が死んだ炎の夜、[4]焼きつくされた町と人びと、[5]いのちと平和の尊さを、の5冊で構成されています。  最新の研究成果をもりこみ、子どもにもわかりやすい文章で、豊富な写真と図版のオールカラー・B5版上製、各巻定価2,310円(税込)です。出版界不況の折からまさに画期的な大企画で、特に全国の学校図書館への期待をこめました。これぞ次世代への平和のバトンとして、ぜひ、ご活用をお願いする次第です。こちら事務局でも受付けています。

楽しく意義ある散策プランを 世界一のツリーがすぐそばに
 2010年7月1日(戦災資料センター・ニュース No.17より)  地下鉄住吉駅(半蔵門線)で下車した私は、二つの運河が交差するクローバー橋を渡って、センターへと歩きます。15分ほど。途中で水遊びの子どもを見たり、コーヒーを飲んだりで、なかなかの散歩道です。  来館者に、帰途にはぜひと推せんしているのですが、先頃、グループできた皆さんは、「この後は東京スカイツリーを見にいきます」との笑顔に、ああ、なるほどと思いました。 目下、押上一丁目に建設中のツリーは、完成すれば世界一の高さの634メートル。すでに半分を越えて展望台の工事中ですが、その迫力たるや天を衝くすごさです。休日などカメラ持参の見物人多数に、墨田区はあわてて仮設トイレを設置。この人たちの一部でも、センターへ足を伸ばしてくれればいいのですが…。  すぐ近くのクローバー橋はむろんのこと、センターと慰霊碑巡りもできて、さらにツリーへと、楽しくて有意義な散策コースプランは、いかが。

語り継ぎのカナメの持続に 維持会員を一人でも多く
 2010年2月1日(戦災資料センター・ニュース No.16より)  戦後も65年。大きな節目を迎えました。東京大空襲の直接の語り継ぎは、限界に近づいたといえます。東京空襲を記録する会が結成されてからも40年、当時30代だった私も、男性の平均寿命に迫りました。  これからは追体験の時代に入るわけで、語り継ぎのカナメともいうべき当センターの意義と役割が、より重くなりました。にもかかわらず、センターを支える維持会員の今後の減少が、とても気がかりです。  センターの存在が周知されるにつれて、修学旅行の生徒たちは、年ごとに増えています。これは素晴らしいことです。平和の種まき作業をずっと持続させるために、「維持会員を一人でも多く!」と、願っています。歴史的な節目のことしが、会員倍増の年になれば…。といいましても、一人が一人でいいのです。身近な人たちに、お声をかけてくださって、まずはお一人を。よろしくお願いする次第です。

無差別爆撃の実相と課題に迫って 猫の語りもあるDVDブックの刊行です
 09年7月5日(戦災資料センター・ニュース No.15より)  猫ブームですが、たぶん教師らしいポーポキ猫と子猫ミミの対話で、「空襲の始まり」から経過と現状と、「空襲をなくすには」までのDVD付き書籍が、7月中旬に出ます。  当センター編による『岩波DVDブック、東京・ゲルニカ・重慶、--空襲から平和を考える』(価格4620円)で、追体験の時代を迎えての意義ある集大成です。  無差別爆撃の起点のゲルニカから重慶、イギリス、ドイツ、東京・日本への空襲の実相に、各国での復興や補償問題にも。さらに記録や伝承の現状や課題をも含めて、と書くと、お固い本かと受けとられそうですね。いいえ、ジュニア向けの映像に、写真、資料などがどっさりで、スタッフ一同、まとめに全力投球しました。  どんな本なのか。少々高いのですが、手にしていただければ・・・。また、もよりの図書館でのリクエストをはじめ、中学・高校・大学にご推せんいただければ幸せです。

石の上にも7年 語りつぐ平和の思い
 09年2月1日(戦災資料センター・ニュース No.14より) 「戦災資料センターは、何年になりますか?」 某所で、ある人から尋ねられました。 「この春で、オープンから7年ですよ」 「よくやってますね。だって国からも都も区も、援助はゼロでしょう。2、3年でつぶれるという声を、かなり聞きましたよ」 「えっ、そうだったんですか。そりゃ知らなかった。石の上にも7年ですよ」 私は苦笑しましたが、当センターの維持と運営は、決してラクではありません。参観者はもちろんのこと、友の会や維持会員の熱いご支援と、創意ある企画力とで、弧塁を守っているのです。でも、皆さんの高齢化と経済危機の影響は、決して小さくはなく、ことしは特に友の会と維持会員を一人でも多く、と願っています。 「完全に民間で運営されている施設が、ほかの何者の制約を受けることなく、その役目を守り続けてほしい」と、感想文にもありましたが、語りつぐ平和の思いをここから、と思うことしきりです。

「書いてみます話もします」 -こわされた家族の記憶-
 08年7月10日(戦災資料センター・ニュース No.13より)  先頃、来館されたある女性から、「家族の崩壊」なる体験記が送られてきました。  当時、深川の白河町に住んでいた彼女は13歳。火の海なかを、避難先である三ツ目通り沿いの味噌屋末広ビルに逃げましたが、そこも危険となって、近くの工場内へ。父と一緒になんとか助かったものの、母、姉、妹3人と弟さんを亡くしたのです。  4日後、ビルの地下室から掻き出された家族との対面のくだりは、あまりにも悲惨で胸が痛くなるほど。次いで、6月に土浦の予科練にいたお兄さんが、やはり空襲で死に、7人もの家族を失いました。体験記のいくつかの箇所を、「もっとくわしく」と申し上げましたら、やってみますとのこと。そして、センターでの語り部も承諾されました。  書いてみます、話もしますと決意された彼女は76歳。センター来館がきっかけで、たのもしいお話です。戦争・空襲のない未来のために、ひとふんばりしていただきたいものです。

センター二期目へ新しい試みを 次世代の「出番」いろいろと
 08年2月1日(戦災資料センター・ニュース No.12より)  昨年はデンマークを旅しましたが、首都にある「抵抗博物館」に、感銘を受けました。ナチ占領下の暗黒時代をテーマにしている館の解説者は、コペンハーゲン大学から派遣された学生でした。現代っ子でも、学んで、立派に語り部役になれるのです。大学の姿勢にも考えさせられました。  当センターも、開館から6年。なんとかの5ヵ年計画ではないけれど、増築も達成し、これより第二期に入ります。体験者は高齢化し、残り時間が少なくなりました。5年後を考えますと、いよいよバトンタッチで、後継者問題が大事とわかっていても、こればかりはスンナリと行きません。  しかし、その一つの試みが、特別展「VOICE-知らない世代からのメッセージ」で、よかったと思います。また次を企画中ですが、当センターを活用して、後継者たる次世代の「出番」に何がどうできるか。こうしてみたらああしたら…の声を、ぜひお寄せくださいますように、期待しています。

増築歓迎の声多く 都民の戦禍を明日へ伝えて
 07年7月20日(戦災資料センター・ニュース No.11より)  この三月に増築完成、リニューアルオープンした当センターは、おかげさまで新しいスタートとなりました。  資料・展示室はずっと充実し、会議室も倍増しましたので、全国からの修学旅行生を受け入れやすくなりました。最新の映像設備も、迫力があると大好評です。  来館したみなさんの感想を、備えつけのノートで拝読していますが、増築を歓迎する声は多く、毎年来て、これが三度目という方もいます。話には聞いていたが、「あまりのすごさに驚き」の声もあれば、世界の無差別爆撃の歴史を、展示にぜひの要望も。…  また、ある男性は、近くに仕事があって、「たまたま目に入った」ので立ち寄ったが、歴史の事実をしっかり知ることが同じ過ちをおこさないことだと思い「平和や命の尊さを忘れかけた時、又訪れたい」と。平和憲法も危うくなりかけた今、決して忘れてはならない都民の戦禍を、確認していただけたらなによりです。また、それぞれのご感想を各新聞の投書らんにぜひと、願っています。

この平和といのちのバトンをきちんと手渡そう センターの増築完成、リニューアルへ
 07年2月1日(戦災資料センター・ニュース No.10より)  くりかえし我れ叫びたし 再たび  おかしてはならじ 戦争の愚を  三人のお子さんを、「炎の夜」で失った森川寿美子さんの一首です。その森川さんがあの世に旅立たれた時を同じくして、戦災資料センターの増築工事完了。再開となりました。 増築募金をお寄せくださった多くの皆さん、呼びかけ人の方々、工事に苦労された方々に、心からの御礼を申し上げます。  おかげさまで、センターはほぼ倍増し、特別展示も含めて、3月1日からリニューアル致します。開館から5年、新資料も集まり、若い研究者たちも育ってきましたので、より充実した体制で、維持と運営、発信が可能になりました。  といいましても、どこからかの助成があるわけではなく、全くの民立民営ですから、まだまだの「綱渡り」です。維持会員を一人でも増やして、支援の輪をさらに…と願っています。平和といのちのバトンを、未来世代にきちんと手渡すために。

語り継ぐ要(かなめ)の場を、しっかりと新しい時代のために
 06年7月10日(戦災資料センター・ニュース No.9より)  「新聞で増築募金のことを知りました。つきましては500万円を、お送りしたいと思います」という電話を受けた事務局の女性は、びっくり仰天。「どうかなさいましたか?」と、問いかけられてしまったそうです。  京都にお住まいのUさんは、先頃ご夫君を亡くし、その遺志をということでした。ご夫君は東京大空襲の「炎の夜」に、陸軍の軍医少尉だったのです。旧本所区の中和国民学校講堂内で救急治療に当たりましたが、その惨状たるや、一般市民、婦女子の「戦場」だった、と記録しています。その体験が、医師として生きる原点になったのでしょうか。ご好意に胸が熱くなりました。  センターは、いよいよ増築工事入りしますが、募金のほうは、もう一息のところ。新築4年で増築とは、夢にも思いませんでしたが、ぜひにという要望があればこそです。東京大空襲・戦災を語り継ぐ要(かなめ)を、しっかりと、より充実したもので、確保したいと思います。