明日へのバックミラーとして開館にあたって一3月9日
 02年7月1日(戦災資料センター・ニュース No.1より)  思えば、57年前の今夜午前0時8分から東京大空襲が始まった。爆撃はわずか2時間余だったが、東京の歴史と運命を大きく変えてしまった。罹災者は100万人を越え、尊い命を犠牲にした方は、10万人にものぼった。9日の夜まで灯火管制のもと、ひもじい食糧をわけあい、語り、笑い、溜息をつきながら朝を迎えるはずだった一人一人だった。それまでの戦史にはこれだけ短時間に10万人もの兵が死んだ例はない。民間人に向けての、人類始まって以来の大量無差別殺戮だった。その後は沖縄の南部戦線や、広島・長崎へとつづいていくわけです。  死者は何も語る術をもっていません。かれらは私たちの心の中にしか存在しないのです。生き残った者とその後に生きてきた者が、犠牲者たちの無念さを引き継いで、未来を人間らしく平和に生きたいと思う。私は谷川俊太郎さんの詩の一節を思い出します。   死んだ彼らが残したものは   生きてるわたし   生きてるあなた   ほかには誰も残っていない   ほかには誰も残っていない  広島・長崎にはそれなりの記念館がある。沖縄には平和の礎があるが、東京にはない。私たち草の根の民間募金によって建てたこのセンターを起点にして、東京を始め全国の空襲の被害実態と、その詳細が分かるように資料を残していきたい。  事実に即した資料とか、記録なしには歴史の検証はできません。センターは規模は小さくても、自動車のバックミラーのような役割で、後ろを見ながら安全を確認しつつ、前へ進むのです。後世代の皆さんは、ここを機に、戦争が起きた原因やプロセスまで独自に学んでほしい。昨年のアメリカにおけるテロ事件から、アフガンへの報復爆撃が繰り返されており、戦争はけっして過去形ではない。過去は未来のためにあるということを心に刻んで、本センターが東京大空襲の惨禍の語りつぎと、研究や学習の場として活用されることをのぞみたい。皆さんのご協力をお願いします。