巻頭言

(戦災資料センター・ニュースNo.40より)

数年ほど前に「戦争体験をいかに継承するか」という論文を書きました。ところが昨年、『なぜ戦争体験を継承するのか』という本が出され(みずき書林)、はっとさせられました。私たちは、戦争体験は継承されなければならないということを自明の前提にして、継承のための手段や方法について論じがちです。しかし身近なところに戦争体験者がいない若い世代に体験を伝えていくためには、やはり「なぜ」という問いの立て方が必要でしょう。時代の変化に柔軟に対応していくことが求められているのです。しかし、時代の変化に合わせるだけでは、現状の単なる追認になってしまいます。戦争体験の継承は、「風化に抗う」時代精神の中から生まれてきたものです。そこで今年のモットーを「しなやかに、そして偏屈に」とすることにしました。「偏屈に」には職人的研究者を自負する私のプライドが込められています。俳優で言えば高倉健さんのイメージです(しょってるなあ~)。

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