平和創造のパワーを

 (戦災資料センター・ニュース No.33より)
 昨年夏のさなかに、東京新聞から原稿依頼の電話がありました。夕刊連載の『この道』に登場はいかが、とのこと。そのコーナーは、大企業の社長さんや著名な文化人による自伝的な読み物で、著者に入れてもらえたのは幸せでしたが、私もついにそんなトシになったのかと、少々やるせない気がしました。
 しかし、当戦災資料センターを紹介するのには、願ってもいない機会です。現在のセンターの活動から遡り、私の生い立ちと四苦八苦の青壮年期をへて、また現在のセンターに着地する、という構成でなんとか書き上げました。連載第1回目で登場するのは、昨年夏の特別企画で活躍した若い世代です。センターの展示品にまつわる小話や、支えてくれたスタッフ、来館者との出会いや交流などを書き連ねながら人生の振り出しに戻るという、『この道』ではやや異色な連載だったかと思います。このほど連載分は、『その声を力に』の1冊にまとめました。
 思えば、これまで過ごしてきた人生の前半までは、折にふれて書いてきましたが、86年の生涯を振り返り、改めて俯瞰したのは初めてでした。人は悩みや迷いの渦中にいると、容易に理性を保ちにくいものですが、当時八方ふさがりかと思えたことに、光が見えてきたのは、余分な苦労を経てきた加齢のせいか、老いも捨てたものではないという気がします。
 書くことは、自分をつきつめることでもあります。夢中で走りつづけてきた過去を見つめ直すことで、残りの人生を自分らしく生きたいし、生きていてよかったといえる社会を、次世代に確実に手渡したいのです。
 この夏、戦争体験なしの来館者が、またたくさんセンターにやって来ます。当センターで平和創造のパワーを得られますように、いささかなりと、そのお役に立てれば・・・と今日もペンを走らせつつ願っております。

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