ああ、よかった…と 開館1周年に思うこと

 03年2月1日(戦災資料センター・ニュース No.2より)
 開館から、まもなく1周年を迎えようとしています。
 なにしろ初めての経験ですから、スタッフ一同、無我夢中できたという感じです。この原稿を書いている現在、参観者は1万300人をこえました。小さな建物なのに、これは予想外の数で、びっくりしています。
 参観者の内訳ですが、地元や都内はもちろんのこと、北海道から沖縄まで全国各地から。そして、次代を担う小中高生たちが1割以上を占めます。かれらは修学旅行で、あるいは総合学習や学芸会、文化祭のテーマなど、目的はいろいろですが、ひたむきに学んでいる姿が特徴的です。
 来館された皆さんは、なにをどのように感じとってくれたのでしょうか。たまたま、手元に1通の葉書があります。息子さんと一緒にこられた70歳の女性で、東京大空襲で生き残ったと書いてあります。被災体験を語りついで行こうと思いつつも、個人の力では限界があって、息子さんをつれて来られたとのこと。展示やビデオを観たあと、息子さんいわく。
「お母さん、どうして助かったの?」
 その問いかけに、猿江町での惨憺たる状況を思い出したそうです。
 戦後世代の息子さんは、それこそ初めて、母の戦争の苦労を感じとったのではないでしょうか。母は万感胸に迫るものがあって、その時、母と子の心を結ぶきずなが、確認できたように思われます。
 感想ノートに、それぞれの思いを書いてくださった方々は干人に近く、戦災体験のある方はその思いを綴り、戦後世代は追体験の重さを、そして小中高生達は、平和の願いを切実に記しています。読んでいくだに胸が熱くなり、ああ、苦労してこのセンターを立ち上げてよかったとしみじみ思うのです。
 しかし、またふたたびキナ臭い状況となってきました。あの戦争で民衆はどのような犠牲を強いられたのか、その事実を語りついでいくことは、「いつかきた道」へのブレーキとなり、明日の平和への力に結び合うと信じて疑いません。この小さな平和の拠点が、やがて線となり面となりますように、ご支援をさらにお願いする次第です。

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