巻頭言

(センターニュースNo.47より) アジア・太平洋戦争における軍人の戦没者の約八割は、最後の一年間(絶望的抗戦期)の死没者だと推定されています。秋田魁新報社の最近の調査は、そのことを見事に裏付けています(『秋田魁新報』2025年1月29日付)。民間人の場合は、そのほとんどが最後の半年間に亡くなっています。日米間の戦力の圧倒的格差を背景に、日本側に無残な大量死が生じたのがこの時期の特徴です。現在自分自身の戦争体験について語ることができる人々は、年齢から考えて、この絶望的抗戦期の戦争の体験者です。その証言は、極限状態における戦争の悲惨さを示すものとして大変貴重なものですが、その証言が戦争被害を中心としたものになるのは、ある意味で当然のことです。さらに、最近のテレビや新聞の報道の仕方にも、被害への偏りが感じられます。そんな時だけに、悲惨な戦争被害の中に加害の問題がどのように折り重なっているのか、そのことを明らかにすることが、これまで以上に重要になっています。空襲で言えば、墜落したB29の搭乗員に対して日本の軍人や民間人が加えた戦争犯罪の問題などは、そうした加害の典型でしょう。他方で、石破内閣は「戦後80年首相談話」を出さない意向だと報じられています。その狙いは、侵略戦争と植民地支配の歴史に対する「反省」と「お詫び」を言明した村山首相談話の死文化でしょう。私はかなりの「老兵」ですが、どうもまだまだ引退はかなわぬ状況のようです(トホホ)。

一覧へ