【01】『決定版 東京空襲写真集−アメリカ軍の無差別爆撃による被害記録−』が刊行されます
初公開写真も多く収録した網羅的な写真集です
早乙女勝元監修/東京大空襲・戦災資料センター編
決定版 東京空襲写真集
アメリカ軍の無差別爆撃による被害記録
定価 12,960円 (本体12,000円)
ISBN 978-4-585-27019-5
A4判・上製 536 頁
勉誠出版より2015年1月刊行(商品ページ)
【目次】
巻頭言(早乙女勝元)
解説(山辺昌彦)
〈本文〉
第1章 1942年4月
第2章 1944年11月
第3章 1944年12月
第4章 1945年1月
第5章 1945年2月
第6章 1945年3月
第7章 1945年4月
第8章 1945年5月
第9章 1945年8月
〈資料〉
撮影団体別空襲写真リスト
東京空襲一覧
本土空襲地域別死者数諸調査
東京空襲区部死者数諸調査
区毎死者・負傷者・罹災者数
仮埋葬地別合葬遺体数一覧・個別埋葬遺体数一覧
東京の爆撃目標施設
東京都区部被災地図
東京下町空襲被災地図
東京空襲の追悼碑・供養碑、慰霊碑マップ
あとがき
本写真集の概要
東京大空襲・戦災資料センターは公益財団法人政治経済研究所の付属博物館ですが、政治経済研究所は文部科学省の学術研究機関に指定されており、科学研究費の助成を受けることが可能な機関です。戦災資料センターは、2011年から「青山光衛氏旧蔵東方社・文化社関係写真コレクション」(略称「東方社コレクション」)の寄贈を受け入れて、3年間の科学研究費の助成を受けた共同研究「戦争末期の国策報道写真資料の歴史学的研究−国防写真隊と東方社を中心に」(研究代表者・山辺昌彦、課題番号・23520853)により同コレクションを整理し、内容を明らかにしました。「東方社コレクション」は東方社の後継組織である文化社の旧社屋に残された東方社と文化社のネガフィルムで、旧社屋を買い取られた青山光衛氏が保存されてきたものです。これは戦後東方社・文化社のネガフィルムを撮影者に分けた残りであると考えられるものです。合わせて、日本写真公社の寄贈写真の再整理もおこないました。これは旧情報局関係者から東京空襲を記録する会に寄贈され、戦災資料センターに引き継がれたものです。日本写真公社は写真協会を引き継いだ写真宣伝の中枢機関で、政府の写真広報雑誌『写真週報』の写真を撮影・収集していました。日本写真公社には国防写真隊が組織され、陸軍の東部軍の指示で空襲被害写真を撮影していました。
「東方社コレクション」の共同研究を継承し、発展させるために、2014年から3年間の予定で科学研究費の助成を受ける共同研究「戦中・戦後の「報道写真」と撮影者の歴史学的研究−東方社カメラマンの軌跡−」(研究代表者・井上祐子、課題番号・26370810)が始まっています。そこでは、東方社のカメラマンであった菊池俊吉氏、林重男氏、濱谷浩氏、別所弥八郎氏、後藤種吉氏らの写真などの資料をご遺族から提供していただき、研究しています。関連して、警視総監から特別の指示を受けて空襲被害を撮影した警視庁カメラマン石川光陽氏の資料の調査もしています。石川光陽氏は東京空襲の写真帳を作成しており、撮影を記録した日誌も書いています。これらの資料をご遺族から借用し、研究を進めています。
以上二つの共同研究を通して、警視庁や軍関係の東方社・日本写真公社のカメラマンが撮影した東京空襲被害写真の残存状況と、その内容の全貌がわかってきました。そしてこのたび、勉誠出版からのご提案により、戦災資料センターの共同研究の成果を基盤に、写真を所蔵されているカメラマンのご遺族のご理解とご協力を得て、『決定版 東京空襲写真集−アメリカ軍の無差別爆撃による被害記録−』を2015年1月20日に刊行することができるようになりました。
本写真集には、戦時中に警察や軍関係者が撮影したもので、今も残っていることがわかっており、提供可能となった東京空襲被害写真約1700点のうち、同じような場面が複数あるもの、撮影ミスのもの、経年劣化が著しいものなどを除いた約1400点を収録しています。戦時中公然と空襲被害写真を撮影できたのは警察や軍関係者のみですので、ほぼ網羅的な東京空襲被害写真集といえます。
1942年4月18日の初空襲、1945年3月10日の下町大空襲、4月・5月の山の手大空襲をはじめ、1944年11月の荏原・神田・原宿・浅草空襲、12月3日の杉並・練馬・武蔵野空襲、1945年1月1日の神田空襲、1月27日の銀座空襲、1月28日の駒込空襲、2月の砂町・千駄ヶ谷・丸の内・神田・上野・浅草空襲、3月4日の巣鴨・駒込空襲、3月31日の四谷空襲、4月1日の戸塚空襲、4月2・4日の武蔵野・立川・蒲田空襲、8月2日の八王子空襲、8月10日の板橋空襲など、大小さまざまな空襲の被害写真を掲載しています。
それらの写真の中には、慶応義塾大学、上智大学、暁星中学校、東京鉄道教習所、亀高国民学校、高井戸第四国民学校、泰明国民学校、忍岡国民学校、小豆沢国民学校などの教育機関、日本医科大学付属病院などの医療機関、関口教会、雙葉高等女学校の聖堂、浅草寺、不忍池の弁天堂、池ノ端の大正寺、泉岳寺、根津神社、東郷神社などの宗教施設、銀座、有楽町、日比谷、丸の内、京橋、日本橋、神田、九段、富士見町、赤坂、上野、浅草、池袋、新宿、渋谷などの繁華街、破壊された住宅、焼野原になった神田、上野、浅草、本所・吾妻橋、亀戸、四谷、牛込、大塚、大森、矢口、八王子などの市街地の被害写真、女性や赤ちゃんなどの非戦闘員の遺体の写真などがあります。
これらの写真からは、アメリカ軍の東京空襲が軍需工場などの軍事施設のみでなく、非軍事施設をも破壊し、住宅地を焼き払い、民間人・非戦闘員を殺戮するという非人道的なものであったことを読みとることができます。
写真集はA4判上製536ページで、写真とともに、「全空襲写真リスト」・「東京空襲一覧」・「本土空襲地域別死者数諸調査」・「東京空襲区別死者数諸調査」・「区毎死者・負傷者・罹災者数」・「仮埋葬地別合葬遺体数一覧・個別埋葬遺体数一覧」・「東京の爆撃目標施設」・「東京都区部被災地図」・「東京下町被災地図」・「東京空襲の追悼碑・供養碑・慰霊碑マップ及び一覧」の10点の関連図表・地図と、東京空襲の概略、撮影者・団体の紹介、収録の経緯などを書いた解説なども収録しています。定価は税別で12,000円です。書店やインターネットでの購入も可能ですが、戦災資料センターでもお預かりし、維持会員や来館者にお求めやすくする便宜を計らいます。