【12】3月23日、ケストナー作品を語り、朗読するイベントを開催しました
本田雅也さんを講師にお招きして
3月23日、ケストナー作品を語り、朗読するイベント「ケストナーを知っていますか?―ドレスデン生まれの作家、ケストナーの作品を楽しむ」を開催しました。
和・ピースリングのなかのゆかさんによるあいさつのあと、講師の本田雅也さん(ドイツ文学・児童文学研究、大学非常勤講師)から、『エーミールと探偵たち』を中心に、ケストナー作品の魅力を語っていただきました。
ケストナーは母親の愛情を一身に受ける一方で、子どもの自分がいつも親たちへの気づかいを求められる複雑な家庭環境で育ちました。20世紀はじめごろのドイツでは、まだ階級社会の壁もあつく、腕のいい職人だったお父さんが、技術革新の影響で仕事が変わってしまうという、生活の苦労も経験しました。
子どもたちが、現実世界のしばりから解放され、大活躍する彼の作品世界には、そのような経験をしたケストナーの願望が投影されています。
その舞台になったのは、ベルリンという大都市。ケストナーは、それまで、子供向けの本に描かれていた冒険小説の舞台を、最新の文物でいろどられたベルリンのまちに置き換え、新しい児童文学の世界をつくりだしました。
よい人間像をさし示すという古くからの児童文学のテーマを引き継ぎながら、同時代のまちの風景や目新しい風俗を大胆にとりいれていったところに、ケストナー文学の魅力があると、本田さんは語ります。
後半は、柳原伸洋さん(東海大学講師・ドイツ現代史)によるドレスデンの説明となかのゆかさんによるケストナー・ミュージアムの紹介のあと、映画・演劇に出演しながら女優をめざす鈴木洋美さんから、ケストナー作品『わたしが子どもだったころ』と詩作品を朗読していただきました。
『わたしが子どもだったころ』は、空襲によって焼かれてしまった故郷のまち・ドレスデンの思い出を、これからの子どもたちのために語り残した作品です。再建された聖母教会の写真の前で、朗読によってよみがえったケストナーの声に耳をかたむけるのは、感動的な体験でした。
朗読のあとは、柳原伸洋さんの指導で、詩作品「ソクラテスにささげる」の原文を、会場のみなさんといっしょに、ドイツ語で声に出して読みあげ、本田雅也さんから詩作品の解説をいただきました。
当日は、ケストナー・ファン、ドイツ文学に興味のある方、また今回のイベントと展示を知って大阪から参加してくださった方など、多くのみなさんにご来場いただき、有意義な時間を過ごすことができました。
文学の「伝える力」を感じたひとときでした。
開催中の特別展会場には、ケストナー・ミュージアムの紹介やケストナーの人生を年譜にまとめた『ケストナー新聞』の展示、日本で出版されたケストナーの本を手に取って読めるミニ図書館も設けられています。
4月7日まで、会期終了もちかくなってきましたが、関心のある方はぜひご来館ください。